中央線特別快速高尾行き

特快という響きが好きでホームに吸い込まれそうになっていた頃。それに毎日悩まされていた。それは決して消えない。忘れるということは消えることとは別だ。見えなくなると言った方がきっと近い。見えなくなったそれは引き出しで埃のように少しずつ溜まる。知らぬ間に大きな塊になって、突然現れる。それは捨てられない。一度生まれたそれは一生捨てられないのだ。だって、それは自分自身だから。どれだけ遠ざけても自分とは別れられない。いつか箪笥の中がそれだけになってしまわない事を祈りながら目を閉じるしか今はできない。それとの向き合い方はいくらでもあるのかもしれない。もしかしたら減らせるのかもしれない。だとしても、今はそのすべを知らないし、それを大切にしてしまう。捨てられた他人のそれもきっと拾って大切にしてしまう。