皮膚

    目が痒い。飲み会がやっと終わって布団に入る。酒を飲むと眠くなる。当たり前の生理現象。さっきまでうたた寝するほど眠かったのに、ある点を境に眠気が吹っ飛ぶ。こういう日はもう朝まで眠れない。

    夜は嫌いじゃない。部屋の電気を消して暗闇と体の輪郭が見えなくなると落ち着く。明るいと自分の体とそれ以外の境目がはっきり見える。ああ、切り離されている。布団で寝ていようと、風呂に浸かっていようと世界と溶け合うことはできない。不安になる。薬品でドロドロに溶けて土や海と混ざり合えば少しは心が穏やかになるだろうか。形が保たれるから孤独なんだ。好きな人といくら触れ合おうと肌は溶けない。体は一つにならない。皮膚が自分以外の世界を拒む。